2017年01月21日

母の死とプラーナ〜末期癌の症例報告㊳〜


浄土真宗に「自然法爾」と言う、有名な4文字熟語があります。

自然は、(しぜん)ではなく(じねん)と読みます。
自然現象のことではなく、「人為的なものがない」あるいは「おのずからそのようになる」誤解を恐れずに言えば、人間の力を超えた力を意味するようです。

法爾(ほうに)は、耳なれない言葉ですが、然と同義語で、「法則どおりになる」という意味に捉えて良いと思います。

要するに、阿弥陀如来の他力は、目には見えませんが、アルキメデスの原理のように絶対的な法則として、人間の思惑を超えいつも機能していると言う、親鸞の造語のようです。

その力の前では、私たちの小ざかしい思惑など役にたたないと親鸞は言います。
この法則を忘れ、法則に抵抗し、ジタバタするから溺れ苦しむのだとしたら・・・
法則に従って生きれば、人生は溺れることもなく、悩むこともなく、苦しむこともなく、確かな方向へと進むことが出来るということのようです。

母親の自然の摂理に従がった死に立ち会い改めて思いました。こうして人間の力を超えた力や自然の法則に従っていれば、魂は苦しむことなく、確かな方向へと進むことが出来るのだと。

もし臨終が1日延びていたら、私たちが看取ることはかないませんでした。一家揃って、しかも母の望んでいた在宅で天寿を全うする姿に立ち会うことが出来たのは、やはり御仏の慈悲だったのかもしれません
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2017年01月14日

母の死とプラーナ〜末期癌の症例報告㊲〜


医師が帰った後、看護師さんと妹の手で“エンゼルケア”と呼ばれる死後処置が施されました。

現代医学は“人の死”を「呼吸停止」「心臓停止」「瞳孔散大」の三兆候で定義します。

私たちは、生きている間中ずっと呼吸を続けています。
インド哲学には、私たちの根本的な個体原理を意味するアートマンという概念があります。アートマンとは元来“気息”を意味するものでした。それは生気や生命を意味するプラーナであり、哲学的には“霊魂”を意味する術語です。ヨーガなどでは人間の身体を“小宇宙”と捉えますが、それは“宇宙”の根本原理とされるブラフマンと“対”になるものです。

つまり呼吸とは、単なる酸素と二酸化炭素のガス交換ではないのかもしれません。呼吸を止めるということ“は宇宙と小宇宙とのエネルギーの交換”をやめ、肉体を残し魂だけが宇宙に還るという意味を持つのではないでしょうか。

心臓には左右2つずつ4つの部屋があり、右の部屋には静脈血、左の部屋には動脈血を湛えています。心臓の運動が全身の静脈血を右側に引き込む一方で、肺から左の部屋に来た動脈血を心臓が全身に送り出します。呼吸により体の外の酸素とエネルギーを充満させた動脈血が、身体の内側を隅々まで旅して再び心臓に帰ってくるのです。

つまり心臓は、自分の外と内のポジションを示す臓器でもあります。心臓が停止するということは、この世での自分の役割を果たし、現世でのポジションが必要なくなったことを意味するのかもしれません。

瞳孔散大は、医学的には脳幹の機能がストップしていることを意味します。しかし虹彩には、瞳孔を開く筋肉と閉じる筋肉があります。脳幹の機能が止まると両方の筋肉が弛緩するはずですが、なぜ開く方の筋肉だけが働くのでしょう?

臨死体験者の多くが「光の生命」、「崇高な光」との出会いを報告しています。
つまり臨死体験には、きわめて印象的な“光との出会い”が核になっていることが伺い知れます。光の正体は何か?生きている私たちに知るすべはありませんが・・・もしかすると、最期にこうした光と出会うために瞳孔が開くのかもしれない

・・そんなことを考えながら、母への最後のケアが終わるのを待ちました。
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2017年01月04日

母の死とプラーナ〜末期癌の症例報告㊱〜

2016年1月3日
「午後5時46分 死亡を確認させていただきました」

正座した松本医師から、正式に母の死が告げられました。

享年八十三歳。

「お母さま良く頑張られたと思います。皆さんもよく尽くされていたと思います。これから病院に帰りスタッフと悲しみを共有したいと思います。何かあればお電話をいただければ力になります」

膣癌による多臓器不全でしたが、末期癌であるにも関わらず穏やかに天寿を全うした母を医師が称賛してくれました。

自宅で家族に見守られ、「私ほど幸せな人はいない」と言い残し、自然の摂理に従った穏やかな最期を迎えた母。その生涯を利他の精神で生きた母を私たちは誇りに思います。

昨日が1周忌でしたが、皆様のご厚情に厚く感謝申し上げます。

尚、新年のご挨拶は失礼させていただきます
posted by かず at 08:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 大村長生館の治療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月26日

年末年始の診療日程


12月31日(土曜日)〜1月3日(火曜日)
まで 休 診 させていただきます。

尚、1月4日(水曜日)より平常通り診療致します。
皆様、良いお年をお迎えください。



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2016年12月21日

母の死とプラーナ〜末期癌の症例報告㉟〜


呼吸が停止していること、まばたきをしていないことを見届け、母の瞼を下げました。

人間は、誕生の時「おぎゃー」と“息を吐き”、最期は “息を吸い”この世を去ると聞いたことがあります。母の臨終を見届け”息を引き取る“という言葉が腑に落ちました。

点滴をしていなかったので、傷一つないきれいな肌にはむくみもありません。その顔はかつて見たことがないほど尊厳に満ち崇高さを湛えていました。

「お母さん、よく頑張ったね」
「楽になったねぇ」
「立派だったよ」
「長い間、本当にご苦労様でした」
「美智子ありがとう お前はよく働いてくれたなぁ」
「おばちゃん、ありがとう ありがとう」

目を閉じ呼吸を止めた母に話しかけていると自然に涙が流れました。
しかしそれは悲しみや喪失感の涙ではなく、母の人生に敬意をはらい、労わりと感謝の気持ちが具現化された涙でした。

呼吸が止まっても、人の耳は聞こえていると聞いたことがあります。
知人はマラソン大会で倒れた時、心停止・呼吸停止を来たしたことがあるそうです。体を動かすことは出来なかったそうですが「もうだめだわ」「臨終です」と医師やスタッフが会話しているのがはっきり聞こえたそうです。「蘇生してから事実確認をしたので間違いない」彼はそう話してくれました。

こうした臨死体験者の証言に照らし合わせると、たとえ生命反応はなくとも、母にも家族の言葉は聞こえていたかもしれません。しかしそれはおそらく肉体を離れたところだと思います。

しばし母と別れを惜しんだ後、名寄市風連国民健康保険診療所に電話をしました。すぐに医師と看護師さんが駆けつけてくれました。
posted by かず at 19:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 大村長生館の治療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月10日

母の死とプラーナ〜末期癌の症例報告㉞〜


母の呼吸が次第に弱っていくのを家族で見守りました。

「何も心配いらない」
「安心して逝っていいんだよ」

「頑張れ」
「死ぬな」とは誰も言いません。

逝こうとする母を囲み、それぞれが優しく声をかけ、母の体に体温が伝わるよう寄り添います。
最期に穏やかで温かい場所を提供すること、それが見守る側ができる最後の仕事だと、皆が感じていました。

母の魂の指示にしたがい、プラーナも送りませんでした。

目は開いていますが、呼吸が静かに弱まっていきます。
小さな息をすっ・・と吸い、呼吸が止まるのを見届けました。
posted by かず at 18:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 大村長生館の治療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月03日

母の死とプラーナ〜末期癌の症例報告㉝〜


「おかあさん着いたよ」
旭川から弟家族が到着しました。

大晦日から名寄に滞在し昨日旭川に帰ったばかりでしたが、危篤の報を受け、取るものも取り敢えずすぐさま駆けつけたのです。

もう声を出すことのできない母に、さかんに話しかけてくれます。
賑やかな会話に耳を傾けながら台所でお茶を入れていると、義妹が私を呼びにきました。

「おかさん、何か言いたいみたい」
義妹の呼びかけに、母が目を開け、口をパクパクさせているというのです。

母の枕元に戻りよく見ると、それは会話の意思表示ではなく下顎呼吸でした。

死の直前の呼吸は、下顎を使うことから「下顎呼吸」と呼ばれます。血圧が低下し、胸郭を使った呼吸が出来なくなるため、顎を使った呼吸に変わり、呼吸数が減少するのです。
それが数分から数十分続いた後に呼吸停止することが多いと、ターミナルケア専門のナースに聞いたことがあります。

「下顎呼吸だ。まずいな・・すぐ妹と親父を呼べ」
弟が、父と妹を呼びに大急ぎで家を出ました。

夜間の付き添いに供え、洗った髪を乾かしていたのでしょう、手にドライヤーを持ったままの妹と、除雪の雪煙で全身雪だらけの父が、母の枕元に駆けつけました。
posted by かず at 18:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 大村長生館の治療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月22日

日本長生医学会札幌支部定例研究会のお知らせ


札幌支部11月定例研究会は
「物語に基づく医療・攻めの医療に向けて」です。
現代医療に疑問をお持ちの先生はふるってご参加ください。

<日時> 平成28年11月27日(日曜日)《13時開場》
     13時30分から16時まで講演、その後質疑応答
<会場> エルプラザ(札幌駅北口)
<講師> TMSジャパン代表 長谷川淳史先生
<演題>  物語に基づく医療6 攻めの医療に向けて
      〜腰痛の治療革命〜
      TMSジャパン・メソッド フェーズ3(腰痛治療プログラム)
<会費> 2,000円(当日会場にて)

【グランドルール】録音も写真撮影もOKですがビデオはご遠慮ください。



posted by かず at 08:01| Comment(0) | TrackBack(0) | かく語れり(仏教概論) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月18日

臨時休診のお知らせ


11月19日(土曜日)は、
学会のため臨時休診させていただきます。

尚、11月21日(月曜日)から平常通り診療させていただきます。
ご迷惑をおかけしますが、何卒よろしくお願い致します。

posted by かず at 08:11| Comment(0) | TrackBack(0) | かく語れり(仏教概論) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月08日

休診のお知らせ

横浜で開催される”第92回長生医学会”出席のため、

11月11日(金曜日)は、午後休診
11月12日(土曜日)は、休  診

尚、11月14日(月曜日)から平常通り診療いたします。

ご迷惑をおかけしますが、上記よろしくお願いいたします。
posted by かず at 08:13| Comment(0) | TrackBack(0) | お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする