2017年03月18日

犯人は遠くにあり

長生学園同期の木原正己先生から、症例報告が寄せられました。

若い先生を対象に書かれたそうです。
臨床で困った時、道標になると思い掲載させていただきました。
木原先生からのプレゼントです♪


水産業を営む患者さん(50歳男性)が4年ぶりに来院されました。
治療室に入ってくるなり「先生御無沙汰しておりました。左肩が痛くなりました。五十肩になりました」と深刻な顔で訴えます。

問診
木原「いつからですか?」
患者さん「もう4か月になります。初めはそれほど気にならなかったのですが、段々痛みが強くなり、今は物を取ろうとしても痛く、服を着る時、腕を袖に通す動作が痛くて辛いです」

木原「他に気になることはないですか?」
患者さん「靴下を履こうとすると、右足はなんでもないのですが、左足を上げると股関節の周りと鼠径部が痛くなり、足が上がってこないのです。それから・・腰に少し痛みがあります」

木原「それはいつ頃からですか?」
患者さん「腰が気になりだしたのは1年半くらい前ですが、左足の靴下が履けなくなったのは6〜7が月前からです」

木原「その他に気になる症状はありますか?」
患者さん「全身が疲れています」

検査
■動的検査:可動性検査を実施したところ、腸骨の後方・下方と外方に変位があり、左足が1,5p短くなっていました。頸椎はC5が後方・左方と上方に変位して頸椎の動きが少なくなっていました。そのため首が右に傾き、左肩関節の機能低下が認められました。

■静的検査:伏臥位にて筋肉の状態、硬さ、しこり、弾力性を調べたところ、左半身の脊柱起立筋に過緊張があり、左の肩甲骨が高くなっていました。また、左の仙腸関節に圧をかけると、患者さんがベッドの上に腕を置いて動けないほど強い放散痛が左肩に現れました。

治療
軽めに諸筋を緩め、左腸骨の後方・下方と外方の矯正を1か所だけ行いました(後方・下方に重点を置く)

予後
木原「今日の治療はこれで終わりです」
患者さん「先生・・肩は治療してくれないのですか?」
木原「起きて肩を動かしてみてください」
患者さん「先生・・肩が動きます。不思議だ!不思議だ!!」

5日後、2度目の来院
私「その後どうでしたか?」
患者さん「とても楽になりました♪靴下も履けるようになり、袖に腕を通しても苦になりません。もう6割は良くなりました。」

患者さんも自覚症状だけでなく、客観的検査で患者さんの状態を確認したところ、左足の短足が1,5pから5mmになり、左仙腸関節に圧をかけても肩に痛みは起きませんでした。
前回と同じく、骨盤の後方・下方と外方の矯正を行い、治療を終えました。

私「どうですか?ベッドから降りて、自分で身体を動かしてみてください」
患者さん「色々動かしてみましたが、もうすっかり治っています♪」
私「まだ完治したわけではありませんよ。また仕事で無理をすれば戻るかもしれません。もう少し治療を続けてくださいね」
患者さん「はい。確かに先生が仰るように、朝早くから市場で魚を仕入れ、一箱10〜20sの魚が入った重い荷物を持ち上げ、何十軒もお客様の店に届けるのです。店に届けるには階段や狭い通路もあり、大変で辛くてもうやめたいと思うことが何度もありました。本当にありがとうございました。では次回の予約をお願いいたします」

考察
この患者さんのケースは、仙腸関節の左側腸骨の変位が第1次の原因と思われます。それを長い期間放置していたため第2次の原因に移行し、補正作用として首と肩に痛みが発生したと考えられます。つまり犯人は痛みの出ている個所ではなく、痛い箇所から遠く離れたところに潜んでいたのです。

こうしたケースでは、第1次の原因を矯正することにより、全体の骨組みの構成が改善されます。第1次の原因が安定した後、第2次の原因がまだ不安定であれば、それから第2次の原因にアプローチするのが理想的です。同じ日に第1次の原因と第2次の原因、両方を矯正することは謹んで下さい。むしろうまくいかない場合が多いです。

私たち治療家は、患者さんの身体を正しく分析し紐解いていくことで結果が伴うことを再確認した症例でした。このケースでは、おそらくどんなに肩を治療しても治癒しなかったと思います。治療は奥が深いですね。しかし、だからこそ遣り甲斐のある仕事なのではないでしょうか。

若い先生のお役に立てばと思い発表させていただきましたが、少しでも参考になれば嬉しく思います。
posted by かず at 08:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 大村長生館の治療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック